女性フリーランスという働き方
自由と安定を両立するための仕事選び


結婚や出産に限らず、今はさまざまなライフプランがあり、誰もが自分の価値観やライフステージに合わせた働き方を模索できる時代です。そんな中で「フリーランス」という選択肢は、多くの女性にとってますます身近なものになっています。
在宅勤務やリモートワークの普及も追い風となり、場所や時間にとらわれず、自分のスキルや得意を生かして自由に働く道が広がっています。しかし一方で、「フリーランスとして本当にやっていけるの?」「どうやって始めたらいいの?」と不安や疑問を抱く方も少なくありません。
この記事では、結婚・出産・育児といったライフイベントの有無にかかわらず、自分らしいキャリアを築きたいと考える女性たちに向けて、フリーランスの基本的な働き方のタイプ、メリット・デメリット、おすすめの仕事や始め方のヒントをフリーランス未経験の方向けにわかりやすく解説します。


 女性フリーランスの2種類の働き方

フリーランスと一口に言っても、その働き方はさまざまです。ここでは、女性フリーランスの主な2つのタイプを紹介します。


特定の勤務先がなく独立している「専業フリーランス」

専業フリーランスは、企業や団体に属さず案件ごとに契約して働くフリーランスの基本形です。日本国内で本業、あるいは副業としてフリーランスという働き方を選択している女性は、約83万2,500人。その中でも企業に属さず専業フリーランスとして働いている女性は、約63万人と、その3/4を占めることがわかっています。
専業フリーランスはクライアントとの契約単位で仕事を進めることが多く、仕事内容や報酬、スケジュールなども自分で調整できます。
子育てや介護など、家庭との両立がしやすく、ライフスタイルに合わせた柔軟な働き方が可能です。

参考:基幹統計として初めて把握したフリーランスの働き方~令和4年就業構造基本調査の結果から


すきま時間を活用する「副業系フリーランス」

副業系フリーランスは、本業の仕事がある中で、空いた時間を活用して副業に取り組む働き方です。日本国内で副業系フリーランスとして働いている女性は約19.9万人。また、副業系フリーランスの人の場合、常に本業と副業を並行しているわけではなく、副業の仕事が発生したときのみ仕事をしているというケースもあります。
副収入を得ながら、自分のペースでスキルを磨けるのがこの働き方の魅力です。収入の柱を複数持つことで、経済的な不安も軽減できます。

参考:基幹統計として初めて把握したフリーランスの働き方~令和4年就業構造基本調査の結果から


 女性がフリーランスを選ぶメリット

女性がフリーランスとして働くことには、多くの魅力があります。特にライフイベントとの両立や自己実現を目指す上で、自由な働き方は大きな味方になるでしょう。


家庭との両立がしやすい

フリーランスは勤務時間や作業場所を自由に選べるため、子育てや介護などの家庭事情に合わせたスケジュール管理が可能です。
例えば男性と女性を比較すると、2021年度の厚生労働省の調査では、介護や看護のために離職する人の割合は男性よりも女性のほうが2倍以上多いことがわかります。また、2025年の民間期間による調査では、育児との兼ね合いで退職や転職を考えたことがある人の割合は男性で約33%、女性で約41%と、こちらも女性のほうが割合が多い結果でした。
フリーランスという働き方なら、保育園の送り迎えや病院の付き添いといった急な予定にも対応しやすく、家族との時間を大切にしながら働ける点が大きなメリットです。ライフステージに併せてキャリアの継続が困難になりやすい女性だからこそ、フリーランスとしての働き方は一層大きな選択肢になり得ます。

参考:令和3年度 仕事と介護の両立等に関する実態把握 のための調査研究事業


自己実現につながる可能性がある

フリーランスは自分自身の裁量で仕事を選び、キャリアの方向性を決めることができます。
特に女性は、ライフイベントによってキャリアが分断しやすいだけでなく、変わりつつあるとはいえ従来の社会構造を背景とした、男性との賃金格差などにより、自己実現がかなえにくい側面があります。フリーランスという働き方は、自分のスキルを生かしたり、キャリアの自己決定権を持つことができたり、複数の収入源を持つことで収入の安定や増加につながるなど、女性の自己実現をかなえやすい働き方です。
新しい分野への挑戦も比較的しやすいため、成長意欲の高い女性にとっては理想的な環境といえるでしょう。


 女性がフリーランスを選ぶデメリット

フリーランスの働き方には自由がある一方で、安定性やサポート体制に欠ける点もあります。


収入が不安定になりやすい

フリーランスは月給制ではないため、毎月の収入が安定しにくいという課題があります。
案件の受注状況や取引先の都合によって収入が左右されるため、貯蓄や複数の仕事を掛け持つなど、リスクを軽減する工夫が必要です。また、フリーランスはキャリアパスが不明確であり、安定して仕事を獲得するためには日々のスキルアップも欠かせません。そのため、自己投資の費用がかさむ可能性があります。
特に、家計を支える立場にある女性にとっては、慎重な計画が求められます。


自己管理が必要になる

フリーランスは上司や同僚の指示や管理がないため、働く時間や業務量、納期などすべてを自分で決めなければなりません。その他にも、会社員と異なり、産休・育休の制度などの福利厚生もないため、デメリットに感じる人もいるでしょう。
また、自宅で仕事をするケースが多いことから、オンとオフの切り替えが難しく、つい働きすぎてしまう人もいます。そして、一人で作業を進めるため、相談相手がおらず、孤独を感じやすい傾向があります。
そのため、計画的にスケジュールを組んだり、定期的に人と交流したりするなど、自分自身のマネジメントがとても重要です。


 女性フリーランスにおすすめの仕事

ここでは未経験からでも始めやすい、おすすめの仕事を解説します。フリーランス協会が発表した「フリーランス白書2023」によると、「出版・メディア系」「通訳・翻訳系」「クリエイティブ・web・フォト系」の業種では、フリーランスで働く人の男女比率が女性のほうが多いことがわかります。このような背景や、未経験でもスキルを習得しやすい業種などを鑑みて、いくつかの職業を厳選しました。

画像:フリーランス白書2023


ライティング・編集

文章を書くことが好きな方におすすめの仕事です。
企業のオウンドメディア向けのブログ記事、商品紹介文、インタビュー記事、コラム、SNS投稿文の作成など、ジャンルは多岐にわたります。
在宅でできる案件が多く、納期管理さえできれば子育てや家事との両立もしやすいのが魅力です。
未経験でも、クラウドソーシングサイトを利用すれば、タスク形式の簡単な記事作成から始められます。


事務職・データ入力

ExcelやWordなど基本的なパソコン操作ができれば始められる仕事です。会議録の文字起こしや名刺情報の入力、アンケート集計といった業務があげられます。
「初心者歓迎」「未経験可」の案件も多く、自宅でコツコツ作業できる点が人気です。業務量を自分で調整しやすいため、子育て中の方やフルタイムで働けない方にも適しています。
パソコン操作に自信がなくても、入力速度や正確さを少しずつ高めていくことで継続的な仕事につながるでしょう。


オンライン秘書

フリーランスや中小企業の経営者をサポートする仕事です。スケジュール調整やメールやチャットでの連絡対応、資料作成、経費処理など業務は多岐にわたります。
オンラインでのやりとりや業務管理が中心となるため、基本的なPCスキルと、ビジネスでのやりとりに慣れている方に向いています。
業務内容が安定している上、継続して依頼されるケースが多く、信頼関係を築ければ長期的な仕事に発展しやすいのが特徴です。


ハンドメイド販売

手作りのアクセサリーや雑貨、刺繍アイテムなど、自分の作品をオンラインで販売するスタイルです。
商品の魅力を伝えるためには、作品の質に加えて、写真の撮り方や商品説明の文章、SNSなどを使った発信の工夫も欠かせません。
趣味の延長として気軽に始められるのが魅力で、コツコツ続けることでファンがつき、やがてイベント出展や店舗での委託販売といった展開につながるケースもあります。
自分の世界観を生かしたものづくりを仕事にできる、やりがいのある分野です。


IT・プログラミング

Webサイトの制作やアプリ開発、業務自動化ツールの作成など、専門性の高いスキルを生かす仕事です。
初心者にとってはハードルが高く感じられるかもしれませんが、現在は女性向けのオンライン学習プログラムや動画講座も充実しており、自宅で基礎から学べます。
基本的な知識を習得したあとは、練習用の課題で実践を積み、その後クラウドサービスなどを活用して案件に応募する、というステップでスキルアップが可能です。
高単価な案件も多く、在宅でしっかりとした収入を得たい方には大きな可能性のある分野です。


デザイン・イラスト制作

Webサイト用のバナーやチラシ、ロゴ、名刺、キャラクターイラストなどを手がけるクリエイティブな仕事です。
デザインソフトの基本操作を学べば、在宅でも受注しやすく、スキルを磨くことで継続的な案件獲得にもつながります。
最近は、SNS用アイコンや動画サムネイル、スタンプ画像など、個人向けのデザイン需要が増えており、感性や世界観を生かした仕事として女性に人気の分野です。


 女性フリーランスとして仕事を始める方法

初めての一歩を踏み出すために、具体的な仕事の始め方を紹介します。


クラウドソーシングサービスに登録する

クラウドソーシングとは、インターネット上で仕事を依頼したい企業や個人と、働きたい人をマッチングするサービスです。
初心者でも応募できる案件が多く、フリーランスとしての第一歩におすすめの方法です。
サービスに登録後は、自分のプロフィールを充実させて、希望の条件に合う仕事に積極的に応募しましょう。


知人・前職のつながりから声をかけてみる

子育て仲間や近所の知人、以前の職場でのつながりなど、身近な人との会話の中で「こんな仕事ができるよ」と伝えておくことで、思わぬ形で仕事の依頼が舞い込むことがあります。
特に、相手との信頼関係がすでに築かれている場合、やりとりがスムーズで仕事の継続につながる可能性も高くなります。
小さな依頼からでも実績として積み重ねていけば、自然と紹介や口コミが広がり、次のチャンスを生み出すきっかけになるでしょう。


SNSやポートフォリオで情報発信を始める

自分のスキルや実績を可視化し、オンライン上で発信することは、フリーランスとして信頼を得るための有効な手段です。
例えば、自分がこれまでに手がけた仕事や対応可能な業務内容をまとめた「ポートフォリオ」を作成しておくと、企業や個人から直接依頼を受けるチャンスが広がります。
また、日々の発信を通じて同じ分野で活動する人とのつながりが生まれ、情報交換やスキルアップのきっかけになることもあります。


 フリーランスを始める前に準備すべきこと

フリーランスとしてスムーズなスタートを切るためには事前準備が重要です。ここでは、安心して一歩を踏み出すために必要な準備について解説します。


開業届と確定申告の基礎知識を身につける

年間収入によって必要性は異なりますが、例えばフリーランスとして一定の収入を得て生活の基盤にしていくことを考えた場合、税務署に「開業届」を提出して、個人事業主として手続きを行うというケースがあります。
提出は義務ではないため、出さなくても罰則はありませんが、青色申告が利用できるようになるなどのメリットがあります。
また、フリーランスは一定の所得があると「確定申告」が必要になります。経費の計上方法や申告の流れを事前に知っておくことで、後から慌てずに対応できるでしょう。
働き始める前に、基本的な知識を押さえておくと安心です。


フリーランスのコミュニティに加入する

フリーランスとして活動を始めると、仕事も学びも基本的に一人で進める場面が多くなります。そんな中で心強い味方になってくれるのが「コミュニティ」の存在です。
コミュニティとは、同じ働き方や職種、関心を持つ人たちが集まり、情報交換や相談、交流を行う場のことです。
仕事の進め方や悩みを共有できるだけでなく、最新の知識を学んだり、新しい案件を紹介してもらえるチャンスもあるでしょう。
なかには女性専用のコミュニティもあり、SNSを活用したグループ、オンライン上の学びの場、地域で開催される交流イベントなど、参加方法はさまざまです。


金銭的な計画を立てる

フリーランスとして活動しても、収入が安定するまでに時間がかかる場合もあります。
そのため、事前に生活費や固定費を見直し、どのくらいの収入があれば暮らしていけるのかを把握しておくことが大切です。
安定して働き続けるためにも、収入と支出のバランスを考えた計画を立てておきましょう。


 フリーランスは女性の可能性を広げる選択肢の1つ

ライフイベントを大切にしながらも、自分らしく働きたいと考える女性にとって、フリーランスという働き方は大きな可能性を秘めています。
未経験から始められる仕事も多く、働き方や時間の使い方も自分で選べるのが魅力です。
その一方で、収入面の不安や孤独感など、フリーランスならではの課題もあります。
自分のスキルや希望に合った働き方を見つけながら、一歩ずつ理想の働き方へと進んでいきましょう。

【監修】

佐野 真子

キャリアコンサルティング総研株式会社代表取締役
国家資格キャリアコンサルタント

企業のセルフキャリアドック導入及び3000名以上の従業員面談、両立支援に携わる。厚生労働省が進めるキャリア形成・リスキリング事業や就職ガイダンス事業に携わり、キャリアデザインセミナーや面談を実施。キャリコンバンク®事業では、企業顧問及び社外相談窓口を通じて、AI時代の働き方についても企業の事業創造とキャリア形成を支援している。

著書
「現代版キャリア革命:昭和世代のための頑張りすぎない生き方を手に入れる方法」
「ビジネスパーソンのための色彩心理活用術 キャリアカラーセラピー®」