「特別なことは必要ない」
―視覚障がい者にもフェムテックを広げたいー
事務局では、今年の展示会テーマ「一緒に踏み出そう」のテーマをもとに、多くのコラボを企画中!
今回は【(一社)日本視覚障がい者美容協会】代表理事 佐藤優子様にお話しを伺いました。
(一社)日本視覚障がい者美容協会 代表理事 佐藤優子様
――日本視覚障がい者美容協会様の概要について改めて教えていただけますか?
日本視覚障がい者美容協会は、ジャパンビューティーブラインドの頭文字を取ってJBBと覚えていただけると嬉しいです。主な活動としては、視覚障がい者という、目が見えなかったり、見えにくかったりする障がいのある方に、美容を通じて社会参画を応援する団体となります。
――具体的に今活動されている内容はどういったものになりますか?
JBBは視覚障がい者と「晴眼者(健常者)」で構成された団体となっています。主な活動内容3つほどあります。
1つ目は、視覚障がい者の方は「情報障がい者」と呼ばれて、例えばボタンがないスマートフォンで情報を得るのが難しいなど、情報がありふれた社会の中から取り残されてしまっている人たちです。目が見えないということは、本当に情報が入ってこないんです。そこで、視覚障がい者の方に向けて、音声で読めるファッション雑誌という、美容や見た目の身だしなみに関する情報を、ボイシーというラジオのような音声媒体で届ける活動をしています。
2つ目は「マルシェ」という活動をしています。先ほど申し上げたように、視覚障がい者の方はお買い物が難しく、ファッション雑誌とかは特に、触ってもただのツルツルの紙なので、ファッション雑誌を開いても、ファッションや身だしなみや見た目の情報って、画像で語っている部分がすごく多くて、そういった不便がすごくあります。ファッション雑誌の情報から私たちはお買い物したいと思うと思うんですが、その情報が全く入ってこないんです。そこで、その画像を言葉で伝える活動に加えて、マルシェという活動で、企業やお店の方が出店して、視覚障がい者の方が健常者のお客様とかに気を使わずにお買い物を楽しめる場を提供しています。例えば、ただ商品を見せるだけではなくて、使い方まで一緒に教えてもらったりしながら、安心してお買い物を楽しめるという活動をリアルで開催しています。
最後にお店の方に視覚障がい者の対応の仕方をトレーニングする活動をしています。実はその障がい者専用のお買い物ができる場所を作ってしまうのは、本当は良くなくて、その場所がないと買い物ができない、そのイベントが開催されないと買い物ができないという状況になってしまうので、どのお店に行っても自由に買い物ができるような環境を作っていかなければならないと考えているからです。今の日本の社会の中では、自由に目が見えない人が「今日買い物に行きたいな」と思って、ふらっとお店に買い物に行って、そこである商品を楽しむことができる環境がまだ整っていません。お買い物を楽しみたいと思っている方々ですが、その環境がないので、私たちが直接、専用の環境を設けるという活動と、同時に企業やお店の方に視覚障がい者を受け入れる仕組みを作ってもらうというトレーニングを行っています。これが活動の内容になります。
――ご説明ありがとうございます。フェムテックについてもお話ししたいのですが、視覚障がい者の方が抱える女性特有の健康問題については、どのように捉えていますか?
視覚障がい者の方は「情報障がい者」であり、一般的に販売されている商品もなかなか手に入らない状態です。
特に健康問題に関してはさらに情報が入りにくい状況です。目が見えないことで生理が来たことが分からない、商品説明やパッケージが読めないなど、健常者と同じレベルでのケアができない状況です。
加えて以前の日本社会では、目が見えない人は自分の姿を見ることができないため、美容を必要としないという先入観がありました。しかし、最近ではSDGsという世界的な目標が掲げられたこともあって、障がい者の方たちがどんどん外に出て活躍できる時代になりました。それに伴い、目が見えない人たちも社会に出ていくためには、身だしなみを整えなければならないというニーズが生まれてきました。
――これは非常に重要な問題ですね。2024年4月1日から障がい者差別解消法が改正され、合理的配慮の提供が義務化されましたが、この背景を受けて、企業側のアプローチに何か変化はありましたか?
これは非常に深刻な問題です。合理的配慮の法律が施行されましたが、障がい者側からすると、企業やお店の方がもっと事前に準備しているはずだと期待しています。しかし、実際には法律が改正されたことすら知らない企業も多く、障がい者が来店してもどう対応すればよいのか分からないという状態が多く見られます。そのため、障がい者側と企業側でのトラブルが多発しているのが現状です。
――佐藤さんのお考えでは、企業が適切に対応するために必要なことは何だと思いますか?
まず、法律が変わったことをしっかりと認識することが重要です。また、障がい者の特性を理解し、正しい対応を行うことが求められます。今の日本社会では、障がい者教育がほとんどなかった世代の方が多いため、障がい者についての理解が不足しています。そのため、企業は障がい者団体を活用し、正しいアプローチを学ぶことが必要です。
――障がい者に対する対応が適切であることが重要ですね。話を戻しまして、視覚障がい者の女性が抱える健康問題について、フェムテック事業者に何か期待することはありますか?
視覚障がい者は情報障がい者であり、社会につながれないことで社会側も視覚障がい者にアプローチできていないのが現状です。しかし、視覚障がい者もアクティブな方が多く、健常者と同じように買い物を楽しみたいという強いニーズがあります。また、いま目が見えない人は31万2千人くらい日本にはいると言われていて、障がい者手帳を持たない方も含めると160万人いるとされています。その人たちへ向けた目が見えなくても使える工夫を施した商品を開発すれば、新たな市場を開拓するチャンスが広がると思います。
――具体的にフェムテック事業者が製品開発を行う際に注意すべき点について、アドバイスをいただけますか?
障がい者専用の製品を作りたいと考えている企業が多い印象です。しかし実際には健常者と同じ製品を使いたいと思っている視覚障がい者が多いです。例えば、パッケージのデザインを言葉で伝える工夫や、QRコードを活用して音声で情報を提供するなど、簡単な工夫で視覚障がい者が製品を使いやすくなると思います。専用のものを開発しようなど難しく考えずに、視覚障がい者にとっても女性の特有問題自体は、健常者と同じなため、先ほどの例のようにちょっとした工夫をしていただくことが重要かと思います。また、視覚障がい者が商品開発に関わることで、新たなアイデアが生まれるかもしれませんね。
――視覚障がい者の方のニーズを理解し、シンプルに対応することが重要だと感じました。
そうですね。まずはシンプルな対応を心がけることが大切です。
――では、最後にフェムテックやフェムケア事業者に対する期待を教えてください。
既存の製品を少し工夫するだけで、視覚障がい者にとって使いやすい製品になります。また、視覚障がい者のニーズに対応することで、企業も新たな市場を開拓できる可能性があると思います。視覚障がい者の方は、情報が入ってきていない現状なだけなので、その点をうまく改善できたら、より良い社会になっていくと思うので、ぜひこれからのフェムケア・フェムテックでの商品開発の分野でも、この障がいの特性を知っていただいて、興味を持っていただき、お力をお貸しいただけたらなって思います。
――ありがとうございました。このインタビューが企業にとって有益な情報となり、社会全体に貢献できることを願っています
ご興味ある方はぜひ下記までお問い合わせください。
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一般社団法人日本視覚障がい者美容協会(JBB)
Tel : 080(3445)7733
e-mail : [email protected]
担当 佐藤
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